株式会社 経営共創基盤

トップページ 会社案内セミナー・カンファレンス > IGPI三周年カンファレンス

IGPI三周年カンファレンス

2010年7月8日(木) 秋葉原富士ソフトビル アキバプラザ5

2010年4月に設立3周年を迎えた経営共創基盤(IGPI)。
同年7月8日、「成長と飛躍」を副題とする記念カンファレンスが、東京秋葉原のアキバホールにて開催された。伊藤邦雄・一橋大学大学院教授、長谷川閑史・武田薬品工業代表取締役社長、黒川清・政策研究大学院大学教授をゲストスピーカーとして迎え、総勢約150名の参加のもと、闊達な討議が行われた。

【対談報告】「IGPIのこれから」

一橋大学大学院商学研究科教授、IGPI経営諮問委員長 伊藤邦雄氏
IGPI代表取締役CEO 冨山和彦

【基調講演】「日本の成長戦略」

武田薬品工業 代表取締役社長 長谷川閑史氏

【時事対談】「再成長に向けたイノベーション戦略」

政策研究大学院大学教授、東京大学名誉教授 黒川清氏
IGPI代表取締役CEO 冨山和彦

【レセプション】

乾杯挨拶:一橋大学大学院商学研究科教授、IGPI経営諮問委員長 伊藤邦雄氏

【対談報告】「IGPIのこれから」

“人間力”でクライアントの飛躍を支援する

冒頭の対談報告は、一橋大学大学院商学研究科教授であり、IGPI経営諮問委員会の委員長をつとめる伊藤邦雄氏からの質問に、当社代表取締役の冨山和彦が答える形式で進行した。
 「設立3年を振り返って」という問いかけに対し、冨山から、業績は想定どおり順調に推移していること、また、産業再生機構出身者による設立というイメージもあって、IGPIは企業再生を主に手がけている印象をもたれているものの、実際には「この3年のプロジェクト実績ベースでみて、再生案件は2割程度にとどまり、コア事業の梃入れ、PDCA再設計、新規事業の立上げなど、成長の加速化を支援するテーマが実際には多い」ことが説明された。
 さらに、リーマン・ショックに端を発した世界的な経済悪化の影響もあり、「事業と財務の両面から経営を支援するIGPIのスタイルが広く受け入れられている」ことにも触れた。ただし、設立時の想定と比べると「多種多様な経営課題を抱えた事業の舵取り策をクライアントとともに考える、知能集約型のコンサルティングの比重が高かった」こと、そしてそのようなニーズに応えるために「プロフェッショナルの陣容が想定より早く100名規模に達した」ことが補足された。その上で冨山は今後を展望して、「クライアントとリスクをシェアして成長を支援する、投資型の案件にもより力を入れていきたい」と意気込みを語った。
 続いて、IGPIオフィスの内部がスクリーンに投影された。沢山のデスクが整然と並んでいるものの、意外に空席も多いという印象の写真だ。冨山は、「クライアント先にどっぷり常駐する“ハンズオン”型のプロジェクト展開を重視しているIGPIならではの光景」であると説明する。一方で、「平日の遅い時間、特に金曜日の夜になると、進捗報告・情報共有で皆が戻ってくるのでオフィス内は賑わう」という。実際、IGPIのプロフェッショナルが日常働いている場所は「日本全国の津々浦々、さらには、米国や中国など海外」にも広がっており、「単に常駐するだけではなく、出向あるいは転籍という形式でのより深いコミット」を求められるケースも多いという。
 「常駐協業型の“ハンズオン”がIGPIのスタイルをもっとも象徴するものでは」と伊藤氏が水を向けると、冨山は「まさにその通り」であり、また「単にクライアントと一緒にいるということではなく、クライアントの役職員も含めて周りを巻き込んで動かす“人間力”の発揮を社員には求めている」と応えた。実例として、東北地方のバス会社の経営支援において、IGPIの社員を経営者として派遣しており、その人材が、行政との交渉から路線の引き直し、料金体系の改革から新しいサービスの開発など、経営として手がけなければならない大テーマを最前線で旗を振って率先しているケース、および、米国市場での事業立ち上げの主担当として現地に単身で長期間赴任し、顧客開拓を切り回しているケースが紹介された。「IGPIの仕事は、経営数字が読める、戦略が立てられるといった机上のことだけでは務まらない。実行力・実現力が求められる」と冨山は語った。
 最後に、「これからのビジョンは何か」という質問に対して、冨山の口から出たのが「イノベーション」という言葉だった。世の中に大きな変化が起こっている中、イノベーションこそが企業経営、さらにはわが国の帰趨の鍵を握ること。そしてIGPIとして、旧弊にとらわれずに将来を洞察する客観的な視点と、組織の現状と心情を変革の当時者として深くくみとる主観的な姿勢をもって、「イノベーションにチャレンジしていくことで、クライアントの成長を支援し、ひいてはわが国経済の競争力の向上に資する。」との決意表明がなされた。
【基調講演】「日本の成長戦略」

国内において質的成長、海外において量的成長を

対談報告に引き続き、壇上にあがったのは武田薬品工業の代表取締役社長の長谷川閑史氏である。氏は経済同友会の副代表幹事もつとめている。講演では、認識すべき日本の現状と世界の潮流を踏まえた日本の国家戦略、日本企業の進むべき道が説かれた。
 あらためて認識すべき日本の状況、すなわち、経済は停滞し、少子・高齢化で労働力人口が減少、膨大な累積債務を抱えた国家財政や最低レベルの対内直接投資など、を鑑みるに、「これまでは経済力で世界をリードしてきた日本が、まさに大きな岐路に立っている」と長谷川氏は語る。
 また、「今の日本は課題が山積みの課題先進国であるが、それらをすべて横並びで解決しようとしてもうまく行かない。そうではなくて、『伸びるところから伸ばす』という発想に切り替える必要があるのではないか。そうしないと『国家の衰退』への道をたどることになる」と危惧を述べた。現状の打破に向け、国外の才能や資金をオープンに受けいれながらのイノベーション促進により、「日本国内では『質的成長』を目指し」、一方、高付加価値・高機能の耐久消費財を先進国中心に売り込んでいくモデルから脱却し、優れた技術や商品を汎用性高くパッケージ化したうえで新興国もターゲットに据えて、「海外市場では『量的成長』を目指す」概念を提起した。また、外国人受け入れ、あるいは法人税減税などのテーマは、それそのものの是々非々ではなく、かかる大きな考え方のもとに設計されるべきものである、と長谷川氏は語った。
 さらに氏の提言は、すべての講義が英語で行われる工科大学院の設置へと続いた。たとえば、日本だけでなく、上海とシンガポールにも拠点を持ち、「アジアの優秀な人材と日本人が相互に刺激しあう環境を作り」、「次代のイノベーションを担う若者を鍛えるインフラを作るべきではないか」というものである。
 課題認識のまとめとして、氏は講演の最後に、グローバル時代の「新・日本流経営」の形として、以下の三本柱を提示した。
・グローバル人材の育成と活用(リーダー育成とダイバーシティ)
・M&Aを梃子にした成長戦略(国内企業同士、海外企業の買収)
・グローバル化するステークホルダーへの対応(コーポレート・ガバナンス、CSR)
【時事対談】「再成長に向けたイノベーション戦略」

“出る杭”を育て、政治と経済を一体化させる

カンファレンスの最後のプログラムは、政策研究大学院大学教授である黒川清氏と冨山との対談であった。黒川氏の、歯に衣着せぬ、時に辛らつで、時にユーモアあふれる発言に会場が大いに沸いた。
 長谷川氏の講演を受け、イノベーションを切り口に対談は口火を切った。冒頭、黒川氏は、新卒入社かつ終身雇用の男性正社員中心である日本企業が、世界的に見ていかに旧態依然としたものであるか、日本の常識がいかにグローバルの非常識であるかを力説した。「『新卒入社→定年退職』という単線キャリアを送る人ばかりで構成されているのが日本社会の悲劇のひとつ」であり、「均質な集団形成がなされる中からはイノベーションが起こりうるはずがない」という氏の発言に会場が沸く。
 続いて氏は、その対極にある自立した異才について例示した。南アフリカワールドカップ日本代表の本田圭祐選手の、自分の力を磨くため、単身でいくつものクラブを渡り歩いてきた彼の姿勢への共感を示し、また、「こういう人材はなかなかいない。iPS細胞を発見した山中伸弥・京大教授も数少ない例外のひとりだろう。彼もまた、独自のキャリアを歩いてきたから成功できたようなものだ」と述べた。
 さらに「日本発のイノベーションを加速させるにはどうすればいいか」という冨山の問いに、黒川氏は、そこで政治が果たしうる役割、をもって応えた。アラブ諸国初となる原子力発電所の建設を韓国の企業連合がつい最近受注したこと。そしてその背景には李明博大統領の巧みな売り込み折衝があったことは、その一例であるとした。
 冨山も、李明博は大統領になる前は企業経営者だったこと、また、フランスのサルコジ大統領、ロシアのメドベージェフ大統領もしかりであることを指摘しつつ、「政治家というより、ステート・キャピタリストという名称がふさわしい面々が国を引っ張っている」と応じた。また、「ひるがえって考えると、日本の政治家や官僚にはそういう人はいない。私も産業再生機構時代の4年、官僚と同じような地位にあったが、さまざまな縛りが多くて、純粋な資本家、企業家として自由に動くことが困難だった」と、黒川氏に賛同、政治が真に果たしうることの可能性について、議論は弾んだ。
 最近、黒川氏が学生に説いているのが「休学のすすめ」だという。「日本はもっと、出る杭となる人間を育てていかなければならない」との問題意識に基づくものである。「1年間、海外、それも発展途上国に行き、現地で暮らしている人の思いを体感することが後の人生に多大な影響を与える。そういう場で、同じ釜の飯を食べた人たちとのネットワークこそが一生の財産になる」と語った。
 冨山は氏の言葉を受け、二男が留学しているカリフォルニア州のある高校について語った。卒業生の多くがスタンフォード大学を筆頭にした一流大学に進む進学校で、アジア系の学生が3分の1を占めており、一時は日本人学生もたくさんいたが、今は数名で、アジア勢の主力は中国人や韓国人になっているという。「日本の場合、本人が行きたいというのに、大学受験に不利になるからという理由で、親が反対するケースが多い」と冨山が補足する。アメリカの大学レベルでも、日本人留学生の数が減っていることが問題になっているが、「日本人の内向き思考がイノベーションを阻害し、日本を弱体化させている」という危機意識で、二人の意見が一致した。
 ここで話題が転じ冨山から、イノベーション創発のための仕掛けとして、IGPIが創業に関わり、出資および役員やスタッフも送り込んでいる企業の事例が紹介された。ライフサイエンス分野を主領域とし、大学や研究機関、あるいは企業を対象に、知財に関する総合的なサポートを行う「知的財産戦略ネットワーク株式会社(IPSN)」である。
 様々な話題で盛り上がりながら、カンファレンスはいよいよ終盤に差しかかる。黒川氏は、もともと熊本発祥で、今では中国に400店舗もの店ができている味千ラーメンに触れた。中国からの留学生がたまたま熊本で食べて、「これはおいしい。中国に進出したら必ず流行るはずだ」と考え、出店を持ちかけたのが進出のきっかけだったという。「イノベーションといっても、何も新しいものばかりを意識する必要はない。この例から、「技術の深堀り」でなく、「面、ドメイン」を広げる大切さを学んでほしい」と黒川氏は続けた。
 最後に、冨山はIGPIの本社がある秋葉原という街を話題にした。同地は「おたくの殿堂」「クールジャパンの聖地」として世界中から観光客を集め、今の東京で最も活性化している地域と言っても過言ではない。そしてそこでは、国産品は駆逐されるどころか逆に、”Made in Japan”を堂々とアピールして存在感を発揮している。日本ならではの特徴を活かしながら、世界を惹きつけているのである。冨山は「秋葉原の魅力は、ごたごたと入り乱れていること、すなわち猥雑性を抜きには語れない。何でも呑み込む力がある。そういう意味で、この街の繁栄ぶりはオープンプラットフォーム・イノベーションの賜物かもしれない」と締めくくった。
【レセプション】
カンファレンス終了後、レセプションが行われた。登壇したのは、対談報告の聞き手もつとめたIGPI経営諮問委員長の伊藤邦雄氏。数メートル先にいる冨山のほうに目をやりながら、「IGPIの経営諮問委員会は、世間一般でいう委員会とは違う。職責をまっとうしないCEOがいる場合、辞めさせる権限が委員長にはある。皆さんも何か心当たりがあればすぐ私に言ってほしい」と発言し、会場を沸かせた後、乾杯の音頭を取った。その後、会は談論風発、会話の花があちこちで咲いていた。