IGPIグループ企業経営者紹介

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任田 正史

茨城交通株式会社 代表取締役社長
日立電鉄交通サービス株式会社 代表取締役社長
株式会社みちのりホールディングス グループディレクター
2008年4月入社

社員と共に地方を支える交通事業を持続させていく

学生時代に見た新聞記事からIGPI・みちのりホールディングスへと繋がる縁

 私は、学生時代、原子核工学を専攻して、理系一本で歩んできました。しかし、就職先を考える際に、果たしてこのまま理系の道へ進むのが自分に合っているのかと考える時期がありました。丁度その頃、現在IGPIのCEOである冨山が「司法試験に合格したにも関わらず、コンサルティング会社に入社した」という新聞記事を目にしました。もちろん当時は、面識などありませんでしたが、狭き門の弁護士という職を蹴ってまで就いたコンサルタントとはどのような職業なのだろうか?とその世界に興味を持ち、就職先としてコンサルティング業界を考えるようになりました。それから約20年後、冨山の下で働くことになり不思議な縁を感じます。
 外資系コンサルティング会社に就職した私は、プロジェクト経験を積んでいく中で、実際に事業会社のマネジメントに携わりたい、そして、ゆくゆくは経営者になりたい、という思いを抱くようになりました。そこで、コンサルタントとして働きだしてから5年目に事業会社へ転職。苦境に陥ったいくつかの企業のマネジメントポジションを任されるなど、ターンアラウンドも経験しました。
 こうした経験を経て、2008年4月、設立直後のIGPIに入社。そして09年4月、茨城交通の案件にアサインされ、現地へと赴くことになったのです。当時、茨城交通は民事再生手続の真っ只中、みちのりがスポンサーとなり再建へと動いており、チームで財務状況の分析、改革プランの立案を進めていきました。

社員と共に考え実践することで、組織を動かし、会社を改革

 経営再建の過程の中で副社長に就任した私は、新生・茨城交通のスタートにあたり、まず雰囲気づくりから取り組みました。再生局面にある企業の社員にしてみれば、どのような経営者がやってくるのか、人として信頼できるのか、今後会社はどうなっていくのか、どんな方向性を打ち出してくれるか、最初はある種の見極めモードでみてくるもの。そこで、私は、出来る限り時間を見つけては、運転手が待機する営業所に顔を出し、社員の生の声に耳を傾けてコミュニケーションを図るよう努めました。地道なことではありますが、こうした他愛のない雑談を通して、少しずつお互いの距離が縮まっていったように感じています。
 改革を進める過程で、特に転機となったのが10年4月。社員から「利用者が減っている路線の運賃を思い切って下げてはどうか」という提案があり、価格改定を決断した時のことです。当該路線は川を隔てて電車が走っており、電車利用のほうが安価に市内に行くことができた為、毎朝、親が車で子どもを駅まで送るケースが多い。学生たちをバスに取り込むことが出来れば、たとえ運賃を下げたとしても、収入が増えるのではないか?こうした仮説を以って自ら提案してきてくれたのです。そして、川を渡る橋のそばで、車が通るたびに助手席に高校生が乗っていないかを確認していく、という地道な実地調査を続けました。冬へと向かう寒い時期ではありましたが、私も率先して調査に参加。一緒に取り組む姿勢を見せて実践していくことで、社員と一体になれた感があり、深く印象に残っています。今振り返ってみると、こうした事ひとつひとつの積み重ねが組織を動かしていく原動力になっていたのではないかと思います。
 運賃改定の件は、実地調査の他、アンケート調査なども実施の上で検討した結果、チャレンジする価値はあると判断。新年度に合わせて最大で39%の大幅値下げを実施しました。利用者からは大好評で、結果は増収。この成功体験があったおかげで、それまで停滞していた萎縮ムードは一掃。「やればできる」という前向きなチャレンジ精神が茨城交通に戻ってきたのです。

みちのりグループの叡智を結集しての取り組み、更なるチャレンジ

 マネジメントを行うにあたっては、一方的に私から発言するのではなく、幹部全体を見回しながら話を振るなどして、できるだけ意見を言いやすい雰囲気づくりを特に意識しています。社員の力を活かし育てて共に成果をあげていくこと、それが会社全体の成長につながることだと考えているからです。
 現在、IGPI100%出資のみちのりホールディングス傘下には、茨城交通をはじめ、複数のバス会社が名を連ねていますが、このように、複数企業が集まり、グループの叡智を結集することで、単体のみでは成し得ない改善効果を生み出すことに繋がっているように感じています。運転手の勤務シフト体制、車両の購入や整備に関すること、等々、グループ内の他社の状況を比較したり、成功事例を取り入れたり、といった取り組みにより、働く人たちに新たな気づきが生まれ、改善意識やモチベーションが高まっているのです。
 グループ傘下の各社を横断的にみていく役割を有する、持ち株会社のスタッフには、広告、マーケティング、車両調達・整備、など各分野のスペシャリストが揃っており、強力に後方支援を実施してくれていることも、各社の収益改善に大きく寄与しています。
 公共交通事業は地域社会を支える「ローカル」ビジネスではありますが、みちのりグループは、海外の先端技術の収集なども積極的に行っています。「ローカル」に留まらず「グローバル」にもアンテナを張り、事業体としての更なる深化にチャレンジしている側面もあるのです。
 茨城交通と隣接するエリアで交通事業を行い、17年12月にみちのりグループ入りした日立電鉄交通サービスの社長も兼務することとなり、茨城県の県央・県北地域の公共交通に責任を持つ立場となりました。人口減少が進む今、地方の交通事業に携わる私たちにとって、どのように事業を持続させていくかは社会的にも重要な課題です。運転手不足が進む中、新しい技術を取り入れ、効率性を高めていくことも考えていかなくてはいけません。地域社会にとってなくてはならない社会インフラだからこそ事業を安定して持続できるように。グループ全体として常にチャレンジをし続けながら、後進の人たちにしっかり道をつけていきたいと考えています。