事例

日系グローバル企業による海外ローカル社会の変革 [コンサルティング]

非連続な変化が起きる東南アジアで、社会の変革を仕掛ける

東南アジアではデジタル技術の急速な普及により、多くの場面でリープ・フロッグ(既存インフラが未整備であるがゆえに技術・サービスが先進国よりも速く・非連続的に発展すること)現象が見られる。これにより事業基盤が揺るがされるリスクにさらされた日系グローバル企業の挑戦と、IGPIの支援を紹介しよう。

誰とともに、何に挑んだのか?
リープ・フロッグの中で、自らも姿を非連続に変える

IGPIは、東南アジア現地の社会・経済環境で日本のグローバル企業と多くの変革に取り組んでいる。それは日本式の事業を現地展開するだけでもなく、また現地スタッフに丸投げするだけでもない。例えば、これまで海外ローカル社会になかった新しい事業を、現地パートナーを探しながら・そして共に考えながら創り出していく支援も行っている。

クライアント企業は、長く東南アジアに事業展開しており、To Bのデジタルソリューションの提供を行ってきた。だが、ここ数年で東南アジアのデジタル環境は根本からの変化が生じている。急速にスマホの普及が進み、個人や少人数そして新規参入者のできることが圧倒的に広がる。また、既存インフラの脆弱性や地域ごとに異なる多様な商慣行もあいまって、全世界を相手にするのではなく「半径5kmの問題解決」(近くの市場で最適なサービスをデジタルとセットで提供する)が大きな意味を持つ。

そこではスタートアップや現地の財閥が圧倒的な存在感を示している。例えばベトナムのビングループはEV(電気自動車)製造・タクシー事業に参入し、瞬く間に大きな需要を創出した。また、中国で300以上のEVメーカーが出現しているのも同様の現象といえる。

「そんな潮流の中、既存のデジタルソリューション事業が今後も収益源となり続けられるのか。」この危機感を発端に、IGPIの支援が始まった。

非連続な変化に向けた取組み
自前主義を捨て、現地の産・学・政ネットワークを結集

プロジェクトのテーマは、将来の柱となる新たな事業を創ることである。その中でまず、クライアント企業とIGPIは、敢えて早々に自前主義を捨てることが重要と考えた。グローバル企業では自社のリソースだけで全てが賄える一方、非連続な変化に対応するのが難しい。既存組織の永続的な発展のために導入した各種制度は、改革の障壁にもなりかねないのだ。

具体的には、事業構想の初期段階から、東南アジアの大学や政府、現地事業、スタートアップとの連携を試みた。ソリューション仮説の構築・初期検証ができれば、協業できそうな事業パートナー候補にすぐにアプローチし、一緒にできないかを議論していく。そしてアジャイルかつスピーディに事業仮説を磨き込んでいく。

とは言っても、当時は2020年のコロナ禍。自由に東南アジア諸国を飛び回ることはできない。インドネシアやベトナムのプレイヤーにコンタクトを続け、相手に「組むメリット」を感じてもらい、オンライン会議にこぎつけることすらハードルが高い。IGPIはクライアント企業のメンバーとともに、数えきれないほどパートナー候補とのディスカッションを行い、複数の事業パートナーを見つけることに成功した。

日本の伝統的な大企業が自前主義から脱却し、海外の現地企業と事業構想段階から議論し、借り物競争をしながらアジャイルに事業を創り出していく。クライアント企業の組織・文化にも変革が生じた瞬間であった。

経営・経済の歴史へのインパクト
デジタルの考え方で既得権益を打破する

冒頭、リープ・フロッグ現象の要因のひとつに未整備なインフラがあると言及した。では、東南アジアには変革を阻害する既存インフラが不在なのかというと、そうではない。

例えばインドネシアには2.7億人の生活を支えるパパママショップが350万店舗あると言われており、それを支えるサプライチェーンは多層化・複雑化している。経済効率の観点ではこれらを整然とさせるのが望ましいが、既存のサプライチェーン・インフラは既得権益を形成しており改革は容易ではない。また、既存インフラを相互に支え合うステークホルダーがいることも忘れてはならない。

このような社会課題に対して、IGPIはデジタルの「考え方」で変革を起こすことを志向している。既存の枠組みを壊したり改善することを是とするのでは、時間的・社会的コストが大きい。そうではなく、既存の枠組みの中でユーザーの行動変革を起こすには何が最も重要かを考えて実行することがコアとなる。

クライアント企業とIGPIは、まさにこのようなサービス構築を進めている。日本を代表するグローバル企業による、荒波への航海は始まったばかりだ。

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