事例

倒産危機の修羅場における事業再生 [コンサルティング]

コロナ禍での「月商ゼロ」からの再生

2020年4月7日。コロナ禍も今や昔、この日が何の日であるかを覚えている方も少ないのではないだろうか。この日から同年5月25日まで、第1回目の緊急事態宣言が発令された。その後も断続的に緊急事態宣言が発令されたのである。宣言の影響を受けた業種は多岐にわたるが、影響が顕著であった業種として、ブライダル業界が挙げられるだろう。緊急事態宣言直後の2020年4月には、クライアント企業の挙式数はゼロとなり、キャンセル費用を除けば月商がゼロとなるほどであった。そのような危機的状況に陥った企業への事業再生支援の事例についてご紹介する。

誰とともに、何に挑んだのか?
「結婚式」の消滅

クライアント企業は、以前から財務体質の脆弱さが指摘されていた中、コロナ禍を受けて再生企業へと転落することとなった。その財務的なダメージの深さもさることながら、結婚式自体が「不要不急」とされ控える動きが起きたこと、また緊急事態宣言自体もいつ終わるのかその出口が見えなかったことから、将来的な改善を見込みづらい状況にあった。

かかる状況下において、IGPIはクライアントだけではなく、メインバンクやリーガルアドバイザーとともに、私的整理スキームを用いた再生に取り組むこととなった。一般的に私的整理は比較的傷の浅い企業に対して用いられるスキームである中、極めて危機的な状況であるにも関わらず法的整理ではなく私的整理スキームを選択したのは、「法的整理≒倒産」と見做される懸念があるからだ。そうなると、予約挙式の更なるキャンセルが見込まれることや、法的整理に入った企業は主たるブライダル雑誌への掲載ができなくなることから追加の予約も見込めなくなる等、ビジネスへの影響が甚大となる。

とはいえ、前述の財務的なダメージから、法的整理とほぼ同様に金融機関への債権放棄などの協力要請を行うとともに、自力再生ではなくスポンサーからの支援を受けながらの再生を目指すことになった。ただし、そもそも金融機関に債権放棄を求めることはハードルが極めて高いことに加えて、前述の市場環境に鑑みると、スポンサー探索にも困難さが伴う、難易度の高い再生案件となった。

非連続的な変化に向けた取組み
ステークホルダーとの交渉の司令塔としてクライアントを再生に導く

事業再生局面においては、多数のステークホルダーとの交渉が必要となる。本件において特に重要な交渉相手となったのは金融機関とスポンサーであった。交渉を行うにあたって必要不可欠であるのが事業再生計画であり、IGPIはその策定支援を行うとともに、当該計画を用いた交渉支援を実施した。

交渉の期間は1年弱に及んだ。その間、Go Toキャンペーンなどによる業績の上向きが見込めそうな時期があったものの、2度目の緊急事態宣言(2021年1月8日~同年3月21日)のような環境変化も相次ぎ、その度に資金が尽きかけ、倒産の危機に瀕してきた。IGPIはクライアントと共に資金繰り施策の検討と実行支援を担うことによって、その都度危機回避を強力に支援した。

クライアント企業・リーガルアドバイザー・メインバンクと一枚岩となって遂行した金融機関との交渉が落ち着き、債権放棄に向けた全行合意の道筋が見え始め、また資金繰りが維持できる状況を作ることはできたものの、事業再生に適したスポンサーの探索は難航した。リストアップしたスポンサーのほとんどから門前払いを食らう状況であったが、最終的には粘り強いスポンサー探索と交渉の末、最適なスポンサーを見つけることができた。

単なるコンサルタント・アドバイザーという立場に留まらず、クライアント企業とともに修羅場の矢面に立つこと、危機の回避に対して直接的にクライアントと共闘すること、等、IGPIの特色が色濃く出ている案件だと言えよう。

経営・経済へのインパクト
コロナ禍で失われた日常を取り戻す

コロナ禍が終息した現在においては、結婚式のような「不要不急」とされた活動についても、多少形は変えながらも以前とほぼ同じように行われるようになってきている。コロナ禍を経て、当時「不要不急」と切り捨てたものがいかに生活を豊かにするうえで重要であったのかを身に沁みて感じている方も多いのではないだろうか。激甚的な外部環境変化にあってもその火を絶やさないようにすることが、本件の意義であったと考えている。

IGPIは、本件のように一見して再生不可能な案件であったとしても、そこに再生させる意義があるのであれば取り組み、僅かな再生の糸口を手繰り寄せるべくクライアントと共闘する。

なお、当該クライアント企業が今や完全なる再生を果たし、次なる飛躍に向けて歩んでいることは言うまでもない。

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